サイトの目的と概要
精神を患った方にとって、時には社会的な接点を持つことが大変になることもあるかと思います。私自身もそうでした。そこで、同じような経験をされている方のために役に立つ「福祉サービス」や「支援機関」、就労に向けて準備を進めていく上で知っておくと助けになる事業所・施設などを紹介したいと思い、このウェブサイトを作成しました。この情報が役に立てば幸いです。
製作者情報
私はaz-akiと申します。福岡県北九州市在住です。
通院歴は21年ほどになります。保健福祉のサービスや制度について、あまり知らない方もいらっしゃるのでは?と思い、このサイトを作りました。質問やわからないことなどはaz666.aki@gmail.comまでご連絡ください。すぐには返答が難しいこともあるかもしれませんが、できる限りお答えします。
免責事項
このサイトは基本的に福岡県北九州在住者向けの説明が多く説明されていますが、自立支援医療や相談支援専門員や訪問看護サービス、就労移行支援、就労継続型A型&B型の説明などは他の地域でも利用の流れは同じであり、応用可能な情報です。各項目に関しては、一般的な説明を述べています。中には制作者本人の体験から得られた情報も書いています。わからないことや、質問などは、「製作者情報」の中のメールアドレスにお問い合わせください。すぐに返答できないこともあります。ご了承ください。
精神科の通院・病院選び
最初に精神的な病について意識した際にどこの病院が良いのか、難しいと思いますが、北九州精神保健福祉センターのホームページ「北九州市いのちとこころの支援センター『https://www.ktq-kokoro.jp/center』の相談窓口の項目から探すか、他の項目にも書きますが、各区役所の「高齢者・障害者相談窓口」に問い合わせることも一つの方法だと思います。
※精神保健福祉センターは各都道府県と政令指定都市に各1か所ずつ必ずあります。
自立支援医療について
なぜ自立支援医療が必要なのか?
精神医療における「自立支援医療」は、精神疾患の治療を経済的にサポートし、患者さんが安心して治療を続けられるようにするための公的な制度です。簡単に言うと、「精神科の通院費や薬代が高くて困っている人の負担を軽くして、治療に専念できるようにする仕組み」と考えると分かりやすいと思います。
精神疾患の治療は、多くの場合、長期間にわたって通院や服薬を続ける必要があります。そのため、医療費がどうしても高額になりがちです。経済的な負担が大きいと、「治療を続けたいけれど、お金が心配で病院に行けない…」といった状況に陥ってしまうことがあります。自立支援医療は、そうした経済的な不安を減らし、安定した治療を継続できるようにするために作られました。
具体的にどんなメリットがあるのか?
- 医療費の自己負担が軽くなる: 通常の医療費は、健康保険を使っても原則3割負担ですが、自立支援医療を利用するとこの自己負担が原則1割に軽減されます。例えば、1ヶ月の医療費が7,000円だった場合、通常だと2,100円の自己負担ですが、自立支援医療を使えば700円で済みます。
- 所得に応じた上限がある: さらに、所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担額に上限が設けられています。もし医療費がその上限額を超えても、超えた分は公費でまかなわれるため、上限額以上の負担は発生しません。これにより、「今月は治療が長引いて医療費がかさんでしまった…」といった場合でも、高額な医療費に悩まされることがなくなります。
- 対象となる医療の範囲が広い: 対象となるのは、外来での診察や薬代だけでなく、精神科デイケアや訪問看護なども含まれます。
どんな人が利用できるのか?
精神疾患(鬱病、統合失調症、躁鬱病、発達障害、パニック障害、何らかの依存症やてんかんを含むなど)があり、通院による継続的な治療が必要だと医師が判断した方が対象です。症状が改善していても、再発予防のために通院治療を続ける必要がある方も対象になります。年齢制限はありません。
どうやって利用するのか?
- 主治医に相談する: まずは、現在治療を受けている精神科の主治医に、自立支援医療を利用したい旨を伝えてください。診断書を書いてもらう必要があります。
- 市町村の窓口で申請する: お住まいの市区町村の保健福祉課、もしくは障害福祉課の担当窓口(北九州市では区役所の「高齢者・障害者相談窓口」)で申請手続きを行います。必要な書類は、主治医の診断書、健康保険証、マイナンバーがわかるもの、所得がわかるものなどです。申請が認められると、「自立支援医療受給者証」が交付されます。
- 受給者証を提示して利用する: 病院や薬局の窓口でこの「受給者証」を提示することで、医療費の自己負担が軽減されます。
注意点
- 対象となるのは、指定された医療機関・薬局のみ: 自立支援医療を利用できるのは、都道府県などが指定した「指定自立支援医療機関」に限られます。原則として、病院・診療所、薬局、訪問看護、デイケアはそれぞれ1か所ずつ登録することになります。
※自立支援医療の申請で登録した病院・薬局・訪問看護ステーション・デイケア以外の場所は適用されないので注意が必要です
- 入院費用は対象外: 自立支援医療は「精神通院医療」であり、入院中の医療費は対象外です。
- 自費診療は対象外: カウンセリングやTMS治療など、健康保険が適用されない自費診療は対象になりません。
- 有効期間がある: 受給者証の有効期間は1年間です。継続して利用したい場合は、更新手続きが必要です。
※自立支援医療の更新手続きを病院で行える所もあり、受給者証の預かりを自宅ではなく病院預かりにすることも可能です
自立支援医療は、精神疾患を抱える方々が経済的な心配をせずに、必要な治療を継続し、より安定した生活を送るための非常に重要な制度です。もし、医療費の負担で困っている方がいれば、ぜひこの制度の利用を検討してみるよう勧めてみてください。
区役所の高齢者・障害者相談窓口(福岡県北九州市の場合)
一番身近な相談窓口は各区役所の「高齢者・障害者相談窓口」になります。各区役所に必ずあります。区役所の保健福祉課になります。「障害者」という言葉に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、この名称は役所特有の区分の為のもので、ご自身が「自分は精神疾患を持っているけれど、障害者ではない」と思われている方もぜひ利用してみてください。かなり広範囲のサポートをしてくれますし、場合によっては他の相談機関に繋いでくれます。
この北九州市のURLに各区役所の「高齢者・障害者相談窓口」について連絡先が網羅されています。https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/924_11017.html
※北九州市以外の都道府県や市区町村にお住まいの方は、各々の地域・市区町村により担当の窓口が異なりますが、主には保健福祉課や障害福祉課という名称が使われていることが多いです
相談支援専門員とは
相談支援専門員は、障害のある方やそのご家族が、地域で安心して生活するために必要な様々な支援に関する相談に応じ、適切なサービス利用計画を作成したり、関係機関との連絡調整を行ったりする専門職です。
※相談支援員や計画相談担当者という言い方をする場合もあります。
利用方法
- 相談・申請: まずはお住まいの区役所の「高齢者・障害者相談窓口」や、地域の相談支援事業所に直接相談します。ご本人やご家族の困りごとや希望などを伝えます。
※障害者手帳の有無は問われません。
- 事業所の選定・契約: 相談支援事業所のリストなどから、ご自身に合った事業所を選び、利用契約を結びます。
- アセスメント: 相談支援専門員が、ご本人の状況や生活全般の課題、希望などを詳しく把握するために、面談などを行います。
- サービス等利用計画案の作成: アセスメントの結果に基づいて、どのようなサービスが必要か、どのように支援していくかの計画案を作成します。
- 計画案の提出・受給者証の交付: 作成された計画案は市区町村に提出され、支給決定が行われます。その後、利用できるサービス内容や量が記載された【受給者証】が交付されます。
- サービス担当者会議: 必要に応じて、相談支援専門員が中心となり、ご本人やご家族、利用するサービス事業所などの関係者が集まり、サービス利用計画について話し合う会議が開かれます。
- サービス利用計画の作成: サービス担当者会議での内容を踏まえ、最終的なサービス利用計画が作成されます。
- サービス利用開始: サービス利用計画に基づき、各サービス事業所と契約を結び、サービスの利用が開始されます。
- モニタリング: サービス利用開始後も、相談支援専門員は定期的にご本人の状況を把握したり、サービス利用状況を確認したりします。必要に応じて計画の見直しなども行います。
料金について
※相談支援の利用にかかる費用は、原則として自己負担はありません。市区町村の障害者相談支援事業や地域生活支援事業として、相談支援事業所は公費で賄われています。
計画相談支援についても、サービス計画作成にかかる費用は、事業所に対して計画相談支援給付金が支払われるため、利用者の自己負担はありません。
探し方
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉課(北九州市在住の場合は各区役所の「障害福祉課 「高齢者・障害者相談コーナー」)にお問い合わせいただくか、地域の相談支援事業所に直接ご相談ください。
追記:最近は「相談支援事業所」のホームページから「投稿フォーム」にお名前や電話番号・メールアドレスを記入して送信することで、後に事業所の職員から連絡を受けることができるところが増えています。
※一度インターネット上で「相談支援員」や「相談支援専門員」と住んでいる地域を入力して検索することをお勧めします。
訪問看護サービス
訪問看護とは、病気や障がいのある方が、住み慣れたご自宅で安心して療養生活を送れるように、看護師や理学療法士などの専門職がご自宅を訪問し、必要な看護やリハビリテーションを提供するサービスです。医師の指示に基づき、医療処置や健康状態の観察、日常生活の支援などを行います。
受けられるサービス内容
- 健康状態の観察とアドバイス: 体温、血圧、脈拍などの測定、病状や健康状態の観察、異常の早期発見、日常生活におけるアドバイスなどを行います。
- 日常生活の支援: 清潔ケア(入浴、清拭、洗髪など)、食事や排泄の介助や指導、移動や体位変換の介助など、日常生活を送る上でのサポートを行います。
利用の流れ
- 既に相談専門支援員と契約している方は一緒にどこの訪問看護ステーションがよいか?を一緒に考えます。
- 主治医への相談: 訪問看護の必要性を主治医に相談します。
- 訪問看護指示書の交付: 主治医から【訪問看護指示書】を書いてもらいます。
- 訪問看護ステーションの選択・契約: 指示書に基づき、利用する訪問看護ステーションを選び、契約を結びます。
- サービス開始: 医師の指示と訪問看護計画に基づき、訪問看護サービスが開始されます。
※精神科に通院している方が訪問看護を受けるには、原則として主治医の「指示書」が必要です。別途、指示書代が数百円かかります。
就労継続支援A型・B型作業所
就労継続型支援事業所(いわゆる作業所)にはA型とB型があり、どちらも障害や難病のある方が働くための福祉サービスですが、いくつかの重要な違いがあります。
就労継続支援A型
- 雇用契約: 事業所と利用者の間で、働く上での約束事を決める契約を結びます。
- 対象者: 一般の会社で働くことは難しいけれど、約束事を守って働くことができる方が対象です。対象となる年齢は、原則として18歳から64歳までですが、65歳になる前に利用を始めた方は、引き続き利用できる場合があります。
- 賃金: 法律で定められた最低限の給料が支払われます。
- 労働時間: 一般的な会社での働き方と同じように、1日4~6時間程度働くことが多いです。
- 労働保険: 業務中のケガや、失業した場合に備えた保険に加入します。
- 有給休暇: 法律で定められた有給休暇が付与されます。
- 選考: 利用にあたっては、書類による選考や面接などが行われる場合があります。
- 目的: 将来的に、一般の会社で働くことを目指している方が多いです。
就労継続支援B型
- 雇用契約: 働く上での約束事を決める契約は結びません。利用者は「利用者」という立場になります。
- 対象者: 一般の会社で働くことは難しいけれど、自分のペースで働くことができる方が対象です。年齢制限はありません。
- 工賃: 作業を行ったことに対する対価として、「工賃」が支払われます。給料とは異なり、法律で定められた最低賃金はありません。工賃は、事業所によって異なります。
- 労働時間: 利用者の体調や状況に合わせて、比較的自由な時間設定が可能です(例:週1回1時間からなど)。
- 労働保険: 業務中のケガや、失業した場合に備えた保険はありません。
- 有給休暇: 有給休暇はありません。
- 選考: A型に比べて、選考がない場合が多いです。
- 目的: 自分の体調に合わせて働くことや、社会とのつながりを保つことを目的としている方が多いです。
項目 |
就労継続支援A型 |
就労継続支援B型 |
雇用契約 | あり(事業所と利用者間で雇用契約を結ぶ) | なし(利用者という立場) |
対象者 | 一般の会社で働くことは難しいが、雇用契約に基づいて働くことができる方 | 一般の会社で働くことは難しいが、自分のペースで働くことができる方 |
年齢制限 | 原則18歳~64歳 (条件により65歳以上も可能) | 年齢制限なし |
賃金 | 最低賃金(時給)以上の給料 | 工賃(最低賃金の保障なし、事業所による) |
労働時間 | 1日4~6時間程度の労働が一般的 | 利用者の体調や状況に合わせて比較的自由(週に1回1時間からなど) |
雇用保険 | あり | なし |
有給 | あり | なし |
選考 | 通常、書類選考や面接が行われる | 基本的に選考はない |
主な目的 | 将来的に一般の会社で働くことを目指す | 自分のペースで働くこと、社会とのつながりを保つ |
就労移行支援と自立訓練
自立訓練とは
自立訓練は、まずは生活リズムを整えたり、事業所に毎日通えるようになることを目標とします。地域で自立した日常生活や社会生活を送るために必要な能力を向上させるための訓練を行うサービスです。生活習慣の確立、コミュニケーション能力の向上、基本的な生活スキルの習得に重点を置きます。
北九州では、ウェルビーが自立訓練のサービスも提供しています。
就労移行支援とは
自立訓練で培った基礎を元に、一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、働くために必要な知識やスキルを身につける訓練や、就職活動のサポート、就職後の職場定着支援などを行うサービスです。復職に向けたプログラムや、独自の雇用リストを持っている事業所もあります。
北九州には、ウェルビー、リタリコ、スプライフ、ディーキャリアなどの事業所があります。
これらのサービスは、ご自身の状況や目指す目標に合わせて選ぶことができます。興味がある場合は、各事業所のウェブサイトを確認したり、区役所の「高齢者・障害者相談窓口」や相談支援専門員に相談してみることをお勧めします。
精神科デイケア
精神科デイケアは、精神疾患を抱える方が、日中の時間を仲間と一緒に過ごしながら、病状の安定、生活リズムの回復、社会参加、そして最終的には社会復帰を目指すためのリハビリテーション施設です。多くの場合、精神科病院やクリニックに併設されており、通院治療の一環として医療保険が適用される医療サービスです。
デイケアの他にも、ショートケア(短時間)、ナイトケア(夜間)、デイナイトケア(長時間)など、利用時間に応じた多様なサービスがあります。
どんな目的で利用するの?
デイケアを利用する目的は、人それぞれですが、主に次のような点が挙げられます。
- 生活リズムを整える: 規則正しい生活習慣を身につけ、昼夜逆転といった生活リズムの乱れを改善します。
- 人との関わりに慣れる: 他の利用者さんやスタッフとの交流を通して、コミュニケーション能力や社会性を高めます。
- 病気との付き合い方を知る: 医師や看護師、作業療法士といった専門職のサポートを受けながら、自身の病気と向き合い、症状のコントロール方法や対処法を学びます。
- 自信を取り戻す: プログラムへの参加や小さな成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻し、社会参加や働くことへの意欲を高めます。
- 孤立感を和らげる: 同じような悩みを持つ仲間と出会い、共感し合える場所があることで、孤独感が減り、精神的な安定につながります。
- 社会復帰の準備をする: 就労に必要な体力や集中力を養ったり、履歴書の書き方や面接練習など、具体的な就職支援を受けられる場合もあります。
どんなプログラムがあるの?
デイケアで提供されるプログラムは多岐にわたり、利用者の状態や目標に合わせて選べます。代表的なプログラムは以下の通りです。
- 軽スポーツや運動: ウォーキング、卓球、ヨガなどで、体力向上やストレス解消になります。
- レクリエーション活動: ゲーム、カラオケ、季節ごとのイベントなどで、楽しみながら交流を深めます。
- 創作活動: 絵画、手芸、陶芸、書道などで、自己表現や集中力を高めます。
- SST(生活技能訓練): 日常生活や人との関係で役立つ具体的なスキルを練習します。
- 心理教育: 病気や薬についての知識を深め、自身の病状理解を促進します。
- ミーティングやグループワーク: 自身の体験を話したり、他者の話を聞いたりすることで、問題解決能力や共感力を養います。
- 調理実習: 食事の準備や片付けを通じて、生活スキルを向上させます。
- 就労支援プログラム: 模擬面接、パソコン講座、ビジネスマナーなどがあります。
利用するにはどうすればいい?費用は?
利用条件: 精神疾患の診断があり、外来治療を受けている方で、主治医がデイケアの利用が必要だと判断した場合に利用できます。年齢制限は基本的にありません。
利用の流れ:
- 主治医に相談: まずは現在通院している精神科の主治医にデイケア利用の希望を伝えます。主治医が必要性を認めれば、デイケアへの紹介や指示が行われます。
- デイケアの見学・相談: 利用したいデイケア施設に連絡し、見学や体験利用を申し込みましょう。疑問点や不安な点を相談し、施設の雰囲気やプログラム内容を確認することが大切です。
- 申し込み・契約: 利用したいデイケアが決まったら、必要な手続きを行い、利用契約を結びます。
- 利用開始: 定期的にデイケアに通い、プログラムに参加します。
費用:
精神科デイケアは医療保険が適用されるため、医療費の自己負担割合(原則3割)に応じて費用がかかります。
ただし、「自立支援医療制度(精神通院医療)」を利用している場合は、自己負担額が原則1割に軽減され、さらに所得に応じた月額上限額が設定されているため、経済的な負担を大幅に減らすことができます。
※食事が提供される場合は、別途食費がかかることがあります。
北九州市内の精神科デイケアについて
北九州市内には複数の精神科デイケア施設があります。具体的な施設名や連絡先を知りたい場合は、お住まいの区の「区役所の高齢者・障害者相談窓口」や、通院している精神科の主治医またはソーシャルワーカーに相談してみましょう。
精神保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)は、精神障害のある方が、その障害により日常生活や社会生活を送る上で様々な困難がある場合に、その困難を軽減し、自立と社会参加を促進するために交付される手帳です。この手帳を持つことで、様々な福祉サービスや支援を受けることができます。精神障害者保健福祉手帳の対象となる精神疾患は、統合失調症、うつ病、躁うつ病などの気分障害、てんかん、薬物やアルコールによる依存症、高次脳機能障害、発達障害など、全ての精神疾患が含まれます。
ただし、知的障害のみの場合は、療育手帳の対象となります。障害の程度によって1級から3級までの等級があり、等級に応じて受けられるサービスの内容が異なります。
申請方法
精神障害者保健福祉手帳の申請は、お住まいの区役所の保健福祉課「高齢者・障害者相談窓口」で行います。
申請の一般的な流れと必要な書類は以下の通りです。
申請の流れ
- 相談・申請書類の受け取り: まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、申請書類一式を受け取ります。※自治体のホームページからダウンロードできる場合もあります。
- 診断書の作成依頼: 精神科の主治医に精神障害者保健福祉手帳用の診断書の作成を依頼します。
※診断書は、初診日から6ヶ月以上経過している必要があります。
- 必要書類の準備・提出:
- ①申請書
- ②医師の診断書
- ③本人の写真(縦4cm(センチメートル)×横3cm(センチメートル)、最近撮影したもの)
- ④印鑑
- ⑤マイナンバーがわかるもの(個人番号カード、通知カードなど)
- ⑥本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
- 注意事項
- ①代理人が申請する場合は、代理権の確認書類と代理人の本人確認書類が必要です。
- ②精神障害による障害年金を受給している場合は、年金証書等の写し(診断書が省略できる場合があります)。
- ③また、通院しているクリニックや病院によっては利用者本人が必要事項を記入した後に、その後の手続きを代行してくれる場合もあります。(本人確認書類や印鑑・写真は区役所の障害福祉課での交付時に必要になります)。
- 審査: 提出された書類に基づき、都道府県または指定都市の精神保健福祉センターで審査が行われます。
- 手帳の交付: 審査後、認定されると精神障害者保健福祉手帳が交付されます。交付までには1~4ヶ月程度かかる場合があります。
注意点
- 1. 申請に必要な書類は自治体によって異なる場合がありますので、必ず事前に窓口で確認してください。
- 2. 診断書の様式は市区町村指定のものがあります。
- 3. 手帳には有効期限がありますので、期限が切れる前に更新手続きが必要です。
※更新手続きは有効期限日の3ヶ月前から行うことができます。
精神障害年金とは
精神障害年金とは
精神障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が出た場合に、国から支給される年金です。精神疾患によって日常生活や就労が困難になった方を経済的に支えることを目的としています。
対象となる年金の種類:
- 障害基礎年金: 国民年金に加入している方(自営業者、学生、無職の方など)が対象です。初診日(初めて医師の診察を受けた日)に国民年金に加入していた方が対象となります。
- 障害厚生年金: 厚生年金に加入している会社員や公務員の方が対象です。初診日に厚生年金に加入していた方が対象となります。障害厚生年金を受給できる場合、障害基礎年金も合わせて支給されることがあります。
支給されるための主な要件:
- 初診日要件: 障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診察を受けた日が、国民年金または厚生年金に加入している期間中であること。
- 保険料納付要件: 初診日の前日において、保険料を一定期間納めていること。
- 障害状態要件: 障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月経過した日、またはそれ以前に症状が固定した日)において、法律で定められた障害等級に該当する状態であること。
等級について:
精神障害年金には、1級、2級、3級の等級があります(障害基礎年金は1級と2級のみ)。 等級は、精神疾患によって日常生活や就労にどの程度の支障があるかによって判断されます。手帳の等級と年金の等級は必ずしも一致しません。
精神障害年金の申請方法
精神障害年金の申請は、複雑な場合が多いですが、以下の手順で進めます。不明な点は、年金事務所や市区町村の年金担当窓口、または社会保険労務士に相談することをお勧めします。
申請の流れ:
- 年金事務所・市区町村の年金窓口へ相談: まずは、初診日や加入していた年金制度を確認し、障害年金の請求が可能か、どのような書類が必要かなどを相談します。
北九州市の場合: 北九州年金事務所(厚生年金・国民年金)またはお住まいの区役所の国民年金担当窓口(国民年金)へ。
- 必要書類の準備: 以下の書類を準備します。特に医師の診断書と病歴・就労状況等申立書は重要です。
- 年金請求書
- 医師の診断書: 障害年金専用の診断書(所定の様式)を、初診日の病院と現在の病院、それぞれで書いてもらう必要があります。
- 病歴・就労状況等申立書: 症状の経過、日常生活や就労への影響などを、ご自身で詳しく記載する書類です。
- 受診状況等証明書: 初診日を証明する書類です。初診時の病院と現在の病院が異なる場合に必要となります。
- 戸籍謄本、住民票
- 所得証明書
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- その他:ケースによって追加で必要となる書類があります。
- 書類の提出: 全ての書類が揃ったら、年金事務所または市区町村の年金担当窓口へ提出します。
- 審査: 提出された書類に基づいて、日本年金機構で審査が行われます。必要に応じて追加書類の提出を求められることもあります。
- 年金証書の送付・支給開始: 審査に通ると、年金証書が送付され、年金の支給が開始されます。審査には数ヶ月かかる場合があります。
注意点:
- 初診日の特定が非常に重要です。 初診日を証明する書類(カルテなど)がないと申請が難しい場合があります。
- 保険料の納付状況を確認しましょう。 未納期間があると受給できない可能性があります。
- 診断書の内容が重要です。 日常生活や就労への具体的な支障が正確に記載されているか確認しましょう。
- 社会保険労務士への相談も検討: 申請手続きが複雑に感じる場合や、より確実に申請を進めたい場合は、障害年金に詳しい社会保険労務士に相談することをお勧めします。専門家がサポートしてくれることで、スムーズな申請が期待できます。
手帳と年金の違い
精神障害者手帳と精神障害年金は、どちらも精神障害のある方を支援するための制度ですが、目的、根拠となる法律、管轄、支給されるものが異なります。
また【障害者手帳の等級と障害者年金の等級は必ずしも同じとは限りません】
制度 |
精神障害者保健福祉手帳 |
精神障害者年金 |
目的 | 精神障害者の自立と社会参加の促進 各種福祉サービスの利用 | 精神障害により日常生活や就労に著しい支障がある方への経済的な保障 |
根拠となる法律 | 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 | 国民年金法、厚生年金保険法 |
管轄 | 地方自治体(都道府県・指定都市) | 日本年金機構 |
支給されるもの | 各種福祉サービス(医療費助成、公共交通機関の割引、税金の控除、公共施設の利用料割引、障害者雇用枠での就職など) | 年金(障害基礎年金、障害厚生年金)。加入していた年金制度や障害等級によって支給額が異なります。 |
申請先 | お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口 | 年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口 |
等級 | 1級~3級(日常生活や社会生活の制限の程度) | 1級~2級(障害基礎年金)、1級~3級(障害厚生年金)(日常生活や就労の支障の程度) |
対象となる障害 | 全ての精神疾患(知的障害のみの場合は療育手帳) | 精神疾患のうち、一定の要件を満たすもの(神経症や人格障害など、対象とならない場合もあります) |
その他 | 手帳の所持の有無が年金の受給要件となるわけではありません。等級も必ずしも一致しません。 |
手帳での割引について
① JRの割引
2025年4月1日より、JRを含む旅客鉄道株式会社の運賃割引制度に精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方も対象となりました。この制度では、手帳に「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額種別」が記載された方が、半額でJRを利用できるようになります。
- 対象者: 精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方(手帳に「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額種別」が記載されている場合に限る)。
- 割引率: 5割引。※ただし手帳の等級が2級・3級の方は片道100キロメートル以上の利用の場合のみ適用されます。その他に付き添いの方も1人分半額になります。
- ※割引はJRみどりの窓口で行うことができます。
- 適用範囲: JRの普通乗車券、普通急行券、定期乗車券(小児定期乗車券を除く)
- その他: 介護者同伴の場合、同一区間の乗車券類を購入する必要があります。
旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額種別について補足
北九州市で発行された精神保健福祉手帳で、「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額種別」が記載されていない場合は、区役所の保健福祉課「高齢者・障害者相談窓口」でスタンプを押印してもらえます。
手帳の提示は、購入窓口(駅の券売機や窓口)での購入時に必要です。
※その他の地域でも各精神保健福祉センターの健康課健康づくり係などでスタンプを押印してもらえるところがあります。
② 西鉄バス利用時の割引(福岡県北部)
西鉄バス(福岡県北部の私鉄・路線バス)で障害者割引を利用する場合は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などのいずれかをお持ちであれば障害者用nimocaカードの発行、またはバスでの支払い時に手帳を提示することで割引が受けられます。
- 障害者用nimocaカードの発行:
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などのいずれかをお持ちの方は、nimoca取扱い窓口で申請することで障害者用nimocaカードを発行できます。障害者用nimocaカードは、nimocaエリア内のバスや鉄道(筑豊電鉄)で自動的に割引運賃で利用できます。発行には、手帳の提示が必要です。
- 手帳の提示:
障害者用nimocaカードをお持ちでない場合でも、手帳を提示することで割引が適用される場合があります。
注意事項:
障害者用nimocaカードは、1人1枚のみの発行です。※有効期限が過ぎたカードは利用できません。
その他の割引
その他にも航空券の割引(航空会社によって割引率が違う)や、携帯電話の基本料金の割引、市営の美術館が無料になったり、テーマパークや動物園・水族館の入場料の割引、映画館は1000円で見ることができます。
※付き添いの同伴者1名も同じ料金になります。
生活保護制度について
生活保護制度は、憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための日本の大切なセ制度です。病気やけが、高齢、失業など、様々な理由で生活に困窮してしまった方が、国が定める基準に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を送れるよう経済的に支援してくれる制度です。
この制度は**【最後のセーフティネット】**として機能し、生活費だけでなく、医療費、住居費、教育費など、生活に必要な費用を幅広くサポートしてくれます。
どんな目的で利用するの?
生活保護制度の主な目的は、生活に困っている方が、自らの努力や他の公的な支援を受けてもなお生活を維持できない場合に、国が最低限度の生活を保障し、自立できるよう支援することです。具体的には、以下のような目的があります。
- 最低限度の生活の保障: 食費、被服費、光熱水費など、日常生活に必要な費用。
- 自立への支援: ただお金を支給するだけでなく、個々の状況に応じた自立を支援します。例えば、就労が可能な方には仕事探しをサポートしたり、病気の方には医療機関への受診を促したりします。
- 困窮からの脱却: 一時的な支援にとどまらず、安定した生活を取り戻し、将来的には生活保護に頼らずに生活できるようになることを目指します。
どんな人が利用できるの?
生活保護は、世帯全体の収入や資産が、国が定める最低生活費を下回る場合に利用できます。主な判断基準は以下の通りです。
- 収入が最低生活費より低い: 世帯全員の収入(給料、年金、手当、仕送りなど)を合計した額が、その世帯の人数や年齢、地域(住んでいる場所の物価など)によって定められる「最低生活費」を下回っていること。
- 資産がない、または活用している: 預貯金や不動産(持ち家など)、自動車、生命保険など、活用できる資産をほとんど持っていない、または既に売却するなどして生活費に充てていること。
- 働く能力の活用: 働くことができる方は、その能力に応じて働く努力をしていること。病気や障害などで働けない場合は、診断書などでその状況を証明できること。
- 他の制度や扶養義務者の活用: 年金や雇用保険、各種手当など、他の公的な制度で受けられる給付は全て活用していること。また、親や子、兄弟姉妹など、法律上の扶養義務者から援助を受けられる場合は、まずその援助を受けることが前提となります。
支給される費用の種類
生活保護で支給される費用は、生活に必要な様々なものに分かれています。これらをまとめて「8つの扶助」と呼びます。
- 生活扶助: 食費、被服費、光熱水費など、日常生活に必要な費用。
- 住宅扶助: 家賃や地代など、住居を維持するための費用。
- 教育扶助: 義務教育に必要な学用品費、給食費、通学費など。
- 医療扶助: 医療機関での診察、治療、薬の費用など。原則として自己負担はありません。
- 介護扶助: 介護サービスを利用する費用。
- 出産扶助: 出産にかかる費用。
- 生業扶助: 就職のための技能習得費、就職準備金、高等学校等への就学費用など。
- 葬祭扶助: 葬儀を行うための費用。
これらの扶助は、必要なものに応じて支給されます。
利用の流れ(申請方法)
生活保護の申請は、お住まいの地域を管轄する福祉事務所(多くの場合、区役所の生活保護課が担当)で行います。
- 相談: まずは、福祉事務所の窓口に出向き、「生活保護を申請したい」と相談します。担当のケースワーカーが、現在の生活状況や困りごとについて詳しく話を聞いてくれます。
- 申請手続き: 申請の意思が確認されると、申請書や資産状況申告書など、必要な書類が渡されます。これらを記入し、添付書類(預貯金通帳の写し、給与明細、賃貸契約書など)と一緒に提出します。
- 調査: 提出された書類や、面談、家庭訪問などを通じて、福祉事務所が世帯の状況(収入、資産、病状、扶養義務者の状況など)を詳しく調査します。必要に応じて、扶養義務者への照会が行われることもあります。
- 決定・通知: 調査の結果、生活保護の受給要件を満たしていると判断された場合、保護の開始が決定され、その内容が通知されます。要件を満たさないと判断された場合は、その理由が通知されます。
- 保護の開始: 保護が決定されると、毎月、生活費などが支給され、必要に応じて医療扶助などが適用されます。
注意点
- 申請は国民の権利: 生活保護の申請は、困窮した状況にある国民の権利です。ためらわずに相談・申請することができます。
- 不正受給について: 虚偽の申請や申告をしたり、収入があったのに報告しなかったりするなど、不正な方法で生活保護を受給した場合は、厳しく対処され、保護費の返還を求められたり、罰則が科せられたりすることがあります。
- 担当者との連携: 生活保護の受給中は、担当のケースワーカーと定期的に面談し、収入や生活状況の変化を報告する義務があります。自立に向けた計画について相談したり、必要な支援を受けたりするためにも、ケースワーカーとの連携は非常に重要です。
※申請のタイミングは自身の貯蓄額が2~3万円以下になった頃に区役所の生活保護課に申請の相談に行くことが無難です。貯蓄額が多いと認められませんし、申請から受給開始には2週間から1か月程度かかることがあります